発想転換の踏み台

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肉食は週2回まで?? 地球を食糧危機から救うプラネタリー・ヘルス・ダイエットはどうすれば実践可能か

 

Planetary Health Dietに基づいた料理のイメージ

「Food Planet Health」より、Planetary Health Dietに基づいた料理のイメージ

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人類が100億人に増えても地球が持続可能な食生活とは

地球の人口増加と気候変動による災害の増加。こうした変化の影響で、近い将来、危惧されているのが世界的な食糧危機だ。

 

2021年2月7日に放送されたNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」の第2回「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」で、これに関して興味深い情報が発信されていた。

 

北欧ホテル王の妻であるグンヒル・ストルダーレン氏が創設したノルウェーEAT財団が2019年1月の報告書「Food Planet Health」で、2050年に100億人の人間が持続可能で健康な生活を維持できる食事を発表したというのだ。

 

報告書は、EAT財団が研究者37人との合同で作成したもの。同財団のホームページから誰でも読むことができる(リンクはこちら。ただし英語。数か国語に翻訳されたバージョンもあるが、日本語訳はない)。

 

「Food Planet Health」の表紙

「Food Planet Health」の表紙

 

そこには、彼らが「The Planetary Health Diet」と名付けた新たな食習慣が具体的に提案されている。「地球的健康食」、とでも訳そうか。

肉の消費を大幅に減らし、その分を穀物・野菜・豆類へ 

ポイントは、世界全体で肉・乳製品や砂糖の摂取量を現在より50%以上減らし、その分、全粒穀物、野菜、豆類の摂取量を2倍に増やすということだ。

 

報告書には、これを実現するために成人1人が1日に摂取する食物の目安が書かれている。それは、下記の通りだ。【〈〉内は許容可能な変動幅】

 

  • 全粒穀物(米、小麦、トウモロコシその他) 232グラム:811㌔カロリー
  • 塊茎類、でんぷん質の野菜(イモ、キャッサバ) 50グラム〈0~100グラム〉:39㌔カロリー
  • 野菜(すべての野菜) 300グラム〈200~600グラム〉:78㌔カロリー
  • フルーツ(すべての果物) 200グラム〈100~300グラム〉:126㌔カロリー
  • 乳製品 (牛乳など) 250グラム〈0~500グラム〉:153㌔カロリー

(以下たんぱく源)

  • 牛、羊、豚 14グラム〈0~28グラム〉:30㌔カロリー
  • 鶏その他家禽 29グラム〈0~58グラム〉:62㌔カロリー
  • 卵  13グラム〈0~25グラム〉:19㌔カロリー
  • 魚  28グラム〈0~100グラム〉:40㌔カロリー
  • 豆類 75グラム〈0~100グラム〉:284㌔カロリー
  • ナッツ類 50グラム〈0~75グラム〉:291㌔カロリー

(添加された油)

  • 不飽和油 40グラム〈20~80グラム〉:354㌔カロリー
  • 飽和油 11.8グラム〈0~11.8グラム〉:96㌔カロリー

(添加された砂糖)

  • すべての砂糖 31グラム〈0-31グラム〉:120㌔カロリー

 

皆さんはこれを見て、どんな感想を持っただろうか。豚肉や牛肉が1日たった14グラム……薄切り肉を1~2切れ、ちょこっと食べるくらいの分量だ。信じられないくらいストイックな基準で、実現は難しいのではないか、というのが私の初見での感想だった。

 

「Food Planet Health」より、食生活の内訳の円グラフ

「Food Planet Health」より、食生活の内訳の円グラフ。野菜や果物が約半分(左側)を占め、肉類を表す赤い部分はごく少量であることがわかる。

実現不可能?いや、やってやれないことはないか・・?

ただ、これらは足し合わせると、成人1日の標準的な摂取量とされる2500㌔カロリーになる。決して栄養不足に陥るような内容ではないのだ。逆に、こうした野菜中心の食事を採ることで生活習慣病の予防にもなり、世界で1年間に1100万人の死を防ぐことができるという。

 

牛や豚などの家畜を育てるのには大量の穀物や水を必要とするため、それが、地球の限りある資源を消耗してしまうことにつながる。今後数十年、世界の人口が増え続ける中、これまで先進国の人々が謳歌していたような肉中心の食生活を世界中の人々がするようになったら、地球は早晩、深刻な食糧危機につながってしまう。

 

そう考えると、一見、荒唐無稽に思えるEAT財団の提案も、実は一笑に付すことはできないのではないかと思う。

 

特にこの提案が素晴らしいと思うのは、ヴィーガンベジタリアンのように一切の肉食を止めるべしということではなく、肉食もこれまで通り続けてよいものの、その量を現在の半分にすべし、と言っている点だ。これなら、比較的多くの人が受け入れることが可能なのではないか。

 

そう思って上記の一覧をもう一度眺めてみると、牛肉か豚肉は10日に1日ならば140グラムを食べることができる。鶏肉と魚は、それぞれ4日に1日、120グラム。ごく控えめとはいえ、だいたい週に2回くらいは“肉食”も許容されるわけだ。それ以外のたんぱく質は、ナッツや豆など植物性のものに頼る。文明発達以前の人類の食生活を考えれば、まあこちらの方が自然とも思える。

 

もちろん、この報告書は北欧の食生活に基づいて提案されているので、地域ごとの文化に当てはめてアレンジすることが推奨されている。日本ならば肉を使わない「精進料理」という素晴らしい文化もすでにあるわけで、Planetary Health Dietに近い食生活はすでに歴史的に存在していたとも言える。

 

もちろん、人類がこうした食習慣に転換するのは容易ではないだろう。何しろ、肉は美味しいから。でも、たとえば週に1日でもPlanetary Health Diet的な要素を食生活に取り入れて、肉の摂取をやめて豆腐由来の食べ物に変えてみるだけでも、積み重ねると大きな変革へとつながる可能性がある。

 

このように、個々の消費者側がライフスタイルに緩い、自主的な「戒律」のようなものを導入することが、持続可能な社会をつくる鍵になるのではないだろうか。私も少しずつ、肉の消費量を減らしてみたいと思っている。

 

(参考資料:EAT財団「Food Planet Health」)

 

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