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『ヴィーガン』本が教えてくれる「自分の健康のための菜食」という発想

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「実利の話」ならば菜食は普及する


『完全菜食があなたと地球を救う ヴィーガン』(KKロングセラーズ)を読んだ。

 

この本、私が特に「役に立つ」と思ったのは、共著者の一人でNPO法人日本ベジタリアン協会代表理事の垣本充氏による、健康面に関する記述だ。

 

ヴィーガンというと、「かわいそうだから動物を食べない」という人たちだと思っている人が多いのではないかと思う。この本の説明でも、20世紀に欧米でそういう思想の人々が集まって始めたのがヴィーガンだとあった。

 

ただ、自分はこの思想には全面的には共感できない。自然界では動物が動物を殺して食べているのだし、野菜を栽培するときにも、害虫を容赦なく殺さなければいけないからだ。「不殺生」の思想など偽善であるという批判も、もっともな面もあると思う。

 

でも、「肉を食べない、あるいは食べ過ぎないことが健康に良い」という主張や、「生産に多大なエネルギーを要する畜肉の消費をおさえれば温室効果ガスの排出が抑えられる」という主張だったらどうだろう。これは思想ではなく実利の話であり、実利の話ならより多くの人が耳を傾けると思う。

 

豊富なエビデンスで菜食の健康面でのメリットを指摘

そうした観点でいうと、この本は菜食の健康面でのメリットについて、数々のエビデンスを提示していて興味深い。たとえば、こんな記述。

 

2009年の米国栄養士会による米国栄養学会誌での発表によれば、「適切に献立されたベジタリアン食(ヴィーガン食を含む)は、健康的でかつ栄養学的に適切であり、ある種の病気に対する予防や治療に有益であるというのが、米国栄養士会の立場である。適切なベジタリアン食は、妊娠中、授乳中、乳幼児、思春期、青年期、老齢期、そしてアスリートを含めて、全てのライフサイクルにおいて適切である」

(書籍からの引用は筆者による要約。以下同)

 

この記述、菜食が栄養学上も健康に良くて、生活習慣病などの予防だけでなく治療にまで有益であるという、かなり踏み込んだ主張だ。しかも老若男女の別なくそうだという。

 

さらに、こんな話も提示される。

 

2015年、WHO国際がん研究機関(IARCが、「加工肉は大腸がんの発症を18%アップする」と発表し、全世界に報道され衝撃を与えた。それによれば、ハム、ソーセージやベーコンなどの加工肉を1日50グラム摂取すると、大腸(結腸、直腸)ガンの発がんリスクは18%増加し、畜肉(牛、豚、羊など)を1日100グラム摂取すると、大腸がんの発がんリスクは17%増加する。

 

 

加工肉や畜肉の食べ過ぎは、がんのリスクを増加させるという。肉食のデメリットの観点からも、菜食を増やすべきだというのだ。しつこいようだが、次のような記述もある。

 

IARC、国連食糧農業機構(FAO)、米国立がん研究所などに所属する120人以上の研究者が世界各国4500以上の研究データを分析した「米国がん研究財団の報告書」の全14条からなる「がん予防ガイドライン」の第1条には、「主として植物性の食事、すなわち多様な野菜と果実、豆腐、ほとんど精製していないでんぷんを主成分とした食物を選択する」、第7条には「畜肉の摂取を1日80グラム以下にする」ことが表記されている。

 

これだけでなく、菜食により摂取できる「ファイトケミカル」にがん予防効果があったり、菜食者のほうが肉食者よりも血管を詰まらせる原因となる悪玉コレステロールが少ないなど、色々細かい説明もなされている

 

一流アスリートにも多いヴィーガン。「宗教」ではなく体のため

また、ウルトラマラソンで驚異的な記録を打ち立てたスコット・ジュレク(米国)や、五輪水泳で4つの金メダルを獲得したマレー・ローズ(オーストラリア)など多くのアスリートがヴィーガンであるという事例も面白い。彼らの多くは「動物を殺したらかわいそうだから」ヴィーガンになったわけではないだろう。競技の上でメリットがあるからやっているのだ。ヴィーガンでは頑強な体はつくれない」という考えは、どうやら思い込みに過ぎないようだ。

 

こうした豊富な情報から、ヴィーガンの健康面でのメリットがこれでもかと語られている。これを読むと、ヴィーガン=宗教」というイメージは過去のものであり、自分自身の健康のための菜食であることがわかる。

 

また、この考えに基づけば、何も「一生肉を食べない」などと誓わなくても、肉を食べる頻度を減らし、菜食中心の食生活に変えるだけでも十分だ。肉は「たまのごちそう」として、これまで通り楽しめば良いのだ。

 

こうした考えの助けになるだけでも、この本は一見の価値があると思うのだが、それに加えて、菜食をめぐる欧米社会の最近の変化についての記述にも驚かされた。その点については、次回のブログでまた触れたいと思う。

 

【今回紹介した本はこちら】

 

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