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「リデュースタリアン(肉食減量主義)」の“あなどれない”インパクト 気候変動への100の対策がランキングでわかる一冊『ドローダウン』

 

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『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン著、江守正多監訳、東出顕子訳、山と渓谷社

 

2020年12月に日本で発売された『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン著、江守正多監訳、東出顕子訳)は、産業革命以後続き、気候変動の原因となっている二酸化炭素濃度の上昇を止め、気温上昇を逆転させる(ドローダウン)を起こすにはどうすればよいのか、具体的な100の方法を紹介した一冊。

 

美しい写真が豊富に使われていて読みやすいうえ、それぞれの対策によりどれくらいのCO2を削減でき、社会的にどれくらいのコストがかかるのかが数値化され、さらに有効度のランキングまでされている。これ一冊で、今後、人類が取り組むべき対策が俯瞰できる優れものだ。

 

再エネや電気自動車を抑えて1位に輝いた意外なモノ

ランキングの1位は、再生可能エネルギーでも電気自動車の普及でもなく(ただし陸上風力発電は2位で、非常に重要。)、クーラーなどに使われる「冷媒」というのはかなり意外な結果だった。

 

オゾン層の破壊につながると言われてフロンガスの使用は禁止されたものの、現在も使われている冷媒ガスの中には二酸化炭素よりはるかに強い温室効果を生むものがあり、今後これらを回収していくことが大事だという。

 

目に見えないガスの回収なんて非常に地味な仕事になるだろうし、資本主義の自由競争に任せていたら誰もそんなこと必死でやらないだろう。政府の介入は必須だと感じた。

ベジタリアン・ビーガンでなくてもいい「リデュースタリアン」という選択肢

 

科学者や産業界が主導すべき課題が多かった中で、私たち一般市民でも取り組める課題で最大のものは、4位に入った「植物性食品を中心にした食生活」だった。

 

私たちが肉を食べるために世界中で行われている家畜の飼育は、毎年排出される温室効果ガスの15%を占め、野菜や穀物などを育てるよりはるかに多くのCO2を排出する。

 

特に牛が顕著だが、飼育のために広大な土地や水を必要とする。もし、その分の土地で穀物を育てていれば世界の食糧不足は緩和されるし、新たな森林破壊も抑えらえる。また、牛の「げっぷ」に含まれるメタンは二酸化炭素よりはるかに強い温室効果ガスで、この影響も馬鹿にならないのだという。

 

では、この本は我々にベジタリアンやビーガンにならねばならない、というのか。いや、そんなことはない。「リデュースタリアン(肉食減量主義)」として、肉を毎回食べるのをやめ、「たまのごちそう」として楽しむべし。そして、植物を多めに食べるべし、としているのが新鮮な指摘だった。

 

そもそも、現代人は動物性たんぱく質を過剰摂取しており、その分を植物性たんぱく質で代替すれば、癌、脳卒中、心臓病になるリスクを減らすことができるという。肉食を減らすことで、地球環境への負荷を大幅に減らせるだけでなく、我々は今より健康になり、社会全体で負担する医療費も抑制できるのだ。

 

以前、このブログで紹介した「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」も似たような考え方を提唱していたが、この本を読むと、植物中心の食生活を普及させることが地球にとっていかに大きなインパクトを持つかを実感することができる。なんといっても、ソーラーファーム(8位)や植林(15位)、電気自動車(26位)などより高順位(4位)なのだから。「リデュースタリアン」、もっとメジャーにさせるべき概念だと感じた。

 

他にも、個人的には環境再生型農業(11位)、環境保全型農業(16位)、間作林(17位)、多年生バイオマス(51位)といった、土壌を棄損せず生産量も確保できるサステナブルな農業というのは非常に興味を感じ、この目で見てみたいと思ったし、ケルプ(昆布)の並外れた成長力を生かして海の「海藻農場」でバイオ燃料をつくるという未来のアイディアにもワクワクさせられた。

 

自分は農業ジャンルへの興味が深いと気づかされたが、もちろん、建築や工業についても多くの項目が割かれていて、興味深いものばかりだ。とても紹介しきれないくらい有益な情報が詰まった本なので、ぜひ読んでみてほしい。

 

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