家庭菜園でネギを「無限栽培」して感じた気候危機を救う「多年生植物」のパワー
食べ残したネギを地面に刺しただけで、また生えてくる
家庭菜園付きのアパートに引っ越してきて1年目に、食べ残した万能ネギを7~8本、何の気なしに畑に植えた。ちょうど、根元の色が白くなっているあたりをあえて少し多めに残して、地面に刺しただけだ。
その少し前、食べ残したカイワレやネギ、ダイコンなどの根元部分をプラスチックのパックに入れて浅く水に浸しておくと、また復活して2度目が食べられるという「水耕栽培」がマイブームだった。だから、その畑バージョンをやってみたのだ。
果たせるかな、ネギは復活して、またニョキニョキと伸びてきた。生命力が強いらしく、特に肥料や水などあげなくても、勝手に育つ。
ひとしきり成長したところで、また白い根元部分を残して、先っぽの方を麻婆豆腐の具としておいしくいただいた。
地植えならば、2回目以降も何度でも収穫が可能
あー、お得だった、と思って、また放置していたら……数週間後には、またニョキニョキと伸びてきた。今度はそれを味噌汁の具にして食べて、また放置していたら……以下同文。
なんとこれ、何サイクルも出来るようなのだ。もちろん、根っこからの栄養だけでなく、ネギの先っぽの方がちゃんと光合成して新たな栄養をつくりだせるように、例えば先っぽが3本に分かれて生えていたら、収穫するのは1~2本、時間が経って老化が始まった感じのものに限定している。
虫に食われることも病気になることもなく、肥料もなしにどんどん成長してくれるネギ。味噌汁の具や弁当の具など色々な用途に使えるので、家計にとってもかなりの助けになっている。
2020年5月ごろに植えてから、冬を越して、2021年12月現在までおよそ1年半。最初、5ミリくらいだったはずのネギの根元部分の直径が、今では1.5ミリくらいに太く成長して、どっしりとした風格を持つようになってきた。せいぜい2回の収穫が限度の「水耕栽培」と違って、地植えの力を思い知ることができた。
「多年生植物」が持つ、地球温暖化危機を救うポテンシャル
もう一つ、大事な視点は、ネギが「多年草」、つまり1年で枯れてしまう「一年草」、一冬は越すものの2年で枯れてしまう「二年草」と違って、何年も生き続けることができる種族だ、ということだ。もちろん、今後は病気になって枯れることもあるだろうが、体感としては、まさに「無限ネギ」という感じだ。
少し、視点を環境の方に移すと、少ないエネルギーで、土壌への負担も少なく何度も収穫できる多年草は、環境にも良いようだ。
先日読んだ『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン著、山と渓谷社)でも、地球温暖化を防ぐ方法の51位に「多年生バイオマス」がランクインしていた。例えば、バイオマス発電の原料となる作物は、1年ですべて枯れてしまう「一年生植物」よりも、「多年生植物」を選んだほうが、コストや環境への負荷の点で有利になる、という。
(以下、引用)
一年生作物と比べて、多年生植物の場合、養分の浸出(水分によって溶け出ること)、土壌の浸食、化学肥料の散布、ディーゼル燃料を食う農機具を頻繁に動かすことが少なくなる可能性があります。バイオエネルギー作物に何を選ぶかは、一年生から多年生に切り替え、その過程で炭素を減らす機会になります。
現在、エタノールの原料にされていることが多いトウモロコシは一年生植物。ところが、これを多年生植物であるスイッチグラスやファウンテングラスなどに変えることで、トウモロコシよりも少ない水と養分で育ち、少ないエネルギーで毎年収穫できる、という。
同書によれば、燃料用のバイオマスだけでなく、食糧としても、多年生植物は注目されている。米カンザス州のザ・ランド・インスティテュートが開発したKernza(カーンザ)という多年生小麦の品種は、小麦粉の原料として実用化されつつあるそうだ。
そんな、地球スケールで「お得」だという多年草の魅力をわが庭で、身近な生活で実感できるネギの無限栽培。おそらくプランターでもある再現性があると思うので、興味を持たれた方はぜひチャレンジしてみてほしい。
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