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SDGsの重要キーワード! ヴィーガンでもベジタリアンでもない「リデュースタリアン」って知ってる?

ブライアン・ケイトマンのTEDトーク

ブライアン・ケイトマンのTEDトークYouTubeより)

肉の消費を減らし、菜食中心の食生活に移行することは、SDGsや気候変動対策を考えるうえでも、個人の健康を考えるうえでも、これから熱い注目を集めるであろうテーマだ。菜食主義といえば、ヴィーガンベジタリアンといった単語が思い浮かぶが、最近、そこに「リデュースタリアン」という概念が新たに浮上した。肉食を完全にやめるのではなく、食べる量を減らそう、という考え方だ。この概念を提唱したブライアン・ケイトマンのスピーチを紹介する。

「私はヴィーガンです」で流れる微妙な空気

リデュースタリアン財団(reducetarian fundation)を創設したブライアン・ケイトマン(Brian Kateman)の2014年のTEDトーク、「Ending the battle between vegans, vegetarians, and everyone else」 をYouTubeで見た。

 

ブライアン・ケイトマンは、このブログでもたびたび言及しているリデュースタリアン(肉食減量主義)という考え方を提唱した人物だ。見るからに聡明そうでユーモアにあふれた彼のスピーチを見ると、リデュースタリアンという言葉の意味が簡潔に理解できる(今のところ英語版しかないけど……)。

 

ブライアンはスピーチの序盤で、「私はヴィーガンです」と宣言してみせる。そしてその時、会場に流れた微妙な空気から、ヴィーガンになることの難しさを喝破する。すなわち、ヴィーガンは社会では「変わった人」「一緒に食事できない人」と見なされ、敬遠されてしまうのだ。

 

この後、ブライアンはヴィーガンではないことが「種明かし」される。彼は、肉食を止めることが地球環境や健康、そして動物の福祉の観点からは望ましいと思いながら、同時にベーコンの美味しさに取りつかれてもいて、肉食をやめていないのだ。

 

「フレキシタリアン」では一貫性がない?

多くの人が直面するであろうこうしたジレンマを克服するためには、よりマイルドな考え方、すなわち肉食を完全にはやめないものの、できるだけ肉を食べる量を減らすという選択肢がある。

 

こうした考え方を表す言葉としては、これまで「フレキシタリアン(柔軟主義)」、「セミベジタリアン」といった概念が生み出されてきた。

 

「菜食をたしなむが、時には肉も食べる」ことを意味するこれらの言葉は、しかし、日和見主義的で一貫性がない、とブライアンは指摘する。脳科学の知見によれば、人は取り組むテーマに一貫性がないと十分な力を発揮できないという。

 

そこで、彼が新たに編み出した言葉が「リデュースタリアン」だ。これならば、肉を食べる量をできるだけ「減らす」という、明確な方向性が含まれる、というわけだ。

 

歴史的に見ても、人口におけるベジタリアンの比率は5-6パーセントで古今ほとんど変わっておらず、これを今後、急速に増やすことはおそらく困難だ。それならば、より間口が広いリデュースタリアンの人口を増やしたほうが、人類全体の肉の消費量をより減らすことになり、地球温暖化対策として有効なはずだ、とブライアンは訴える。

 

……と、スピーチの内容はざっとこんな感じだ。

 

考え方を普及させるには、ネーミングが大事

人類が肉の消費量を減らして菜食中心の食生活に移行することが地球温暖化対策への有効な手段になる、という考え方自体は、他にも多くの人や団体が唱えていることでもある。

 

ブライアン・ケイトマンの論に特徴的なのは、「リデュースタリアン」や「フレキシタリアン」といった「名称」に着目したところだろう。

 

たとえば同じことを表していても、「地球温暖化」と「気候変動」という二つの言葉を見せると、人々は前者から、より深刻なイメージを喚起されるという調査結果があるという。ある考え方がどれくらいインパクトを持ち、世の中に普及するかどうかには、ネーミングが大きく影響するのだ。

 

衝撃的な「リデュースタリアン」の検索ボリューム

ところで、わが日本の状況を見ると、たとえば検索ワードのトレンドを調べるGoogleトレンドでは、「ベジタリアン」が横ばい、「ヴィーガン」が近年上昇している一方、「リデュースタリアン」も「フレキシタリアン」も計測不能。つまり、ほとんどゼロに近いほど検索されていない。

 

月間の検索ボリュームを調べるGoogle search consoleのキーワードプランナーでも、「ベジタリアン」「ヴィーガン」がともに5千〜1万規模なのに対し、「リデュースタリアン」「フレキシタリアン」はこれまた検索不能

 

残念ながら、日本国内ではリデュースタリアンの概念はまったく、と言っていいほど普及していないことがわかる。

 

唯一「ベジタリアン」の関連ワードで「ゆるベジタリアンというのが出てきたが、この辺りがリデュースタリアンに近い考え方だろう。「ゆる」好きな日本人のフィーリングに合うのは、むしろこういった、警戒感を抱かせない呼称なのかもしれない。

 

実際にどんな呼び方が最適なのかはともかく、私はリデュースタリアンが表すコンセプトは、日本でもっと普及させていくべき重要な考え方だと思っている。そのために何が必要なのか、今後も考えていきたい。

 

【今回紹介した動画はこちら】

www.youtube.com