YouTube鑑賞より有意義な時間!? オンライン大学講座の「JMOOC」で立命館大学の「SDGs表現論」を受けてみた!
- 『シン・ニホン』の記述をきっかけに、MOOCの世界にコンニチワ
- 初めて受講した「SDGs表現論」が激アツだった!
- 大学生以来の「レポート提出」と、未知の「相互評価」を体験
- YouTubeとの違いと、オンライン大学講座を受けるメリットとは
『シン・ニホン』の記述をきっかけに、MOOCの世界にコンニチワ
安宅和人さん著の『シン・ニホン』を読んだときに、世界の大学の授業がオンラインで受けられる「MOOC(=Massive open online course) 」というものが普及しつつあるという話を読んだ。その日本版の一つとして「JMOOC」というプラットフォームがあるというので、モノは試しと早速、受講してみた。
この「JMOOC」は、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会という非営利団体が運営していて、なんと、授業はすべて無料。2013年の設立以来、東大、早稲田、慶応ほか、日本の有名大学の講座がこれまで400以上提供されているという。
非営利ということで広告表示などもないが、受講前のアンケートで「どんなサービスならば有料会員になってもいいと思いますか」的なことを聞かれたので、どうやら今後のマネタイズを模索しているっぽい。これだけのサービスを完全無料って、コストも考えるとあまりサステナブルとはないような気もするが……いずれにせよ受講者側にはメリットしかないので、今のうちに体験しておくことにした。
オンライン講座はだいたい、一つの授業につき10~15分程度の動画を見て、最後に選択式のミニクイズに答えるという形式が一般的のようだ。1週あたり4~5回の授業が用意されていて、全5週だとするとだいたい20~25回の動画を見るとか、そんな感じ。
カリキュラムを見渡すと、AI、統計、データサイエンスなどが手厚く、まさに『シン・ニホン』で指摘されていた、これから日本人にとって必要になりそうな分野に重点が置かれている。もちろん、それ以外の歴史とかサイエンスなどの「一般教養」的な授業もたくさんあり、よりどりみどりだ。
10分くらいなら通勤中とか隙間時間で受講できるし、スマホでも受講できるし、かなり魅力的なサービスなんじゃないか、これは。
初めて受講した「SDGs表現論」が激アツだった!
そんなわけで、私が初めて履修してみたのは、立命館大学の講座「SDGs表現論」。
タイトルだけではなんだか良くわからなかったが、いきなり統計学とかとるのは難しそうで気が引けたので、何となく分かりやすそうなこの授業を選んだ。
結果的には、これは「当たり」授業だった。
主な講師を務める山中司さんは、立命館大学生命科学部の教授で、普段は英語の授業を担当しているとのこと。
この授業では英語は関係なく、SDGsを実践していくのに欠かせない「プラグマティズム」や「ネオ・プラグマティズム」の考えについて、熱く語りかけるような調子で訴えている。私たち個々人が、自分の人生をかけて追いかけるべきテーマを見つけ、「マイプロジェクト」を立ち上げれば、世界は変わる、という話だ。
詳しい内容はぜひ授業を聞いてみてほしいが、この、「プラグマティズム」に基づいた考え方を伝えることに授業の主眼が置かれており、SDGsは一種の「口実」。それでも、山中さんの訴える考え方にはめちゃくちゃ共感できたし、山中さんの「熱意」や「本気」がビンビンに伝わってくる語り口も良くて、実際に、自分も「マイプロジェクト」を実践していこう、と、気が引き締まる思いになった。
こんな話を大学1年の時に一般教養の授業あたりで聞いていたら、もっと違った人生になったかもなぁ……とも思ったが、41歳の今聞いても、十分、大きな意味を持つ授業だったと思う。
大学生以来の「レポート提出」と、未知の「相互評価」を体験
全24回の授業の最後には、課題として「マイプロジェクト」を実際に考え、レポートとして提出する。
レポートの採点は、相互評価。自分が提出したレポートに対し、他の受講者3人がつけた得点とコメントが送られてくる。一方、自分は他の受講者5人のレポートを読んで、得点をつけてコメントを書き込むというものだ。
書いた人の名前などの個人情報は表示されないのでプライバシーは守られているが、なかなか緊張する作業だ。仕事以外で他の人に自分の書いたプラン的なものを開示したり、人のプランをじっくり読むことも普段あまりないので、「ああ、あの授業を聞いてこういうことを考えるんだ」と、いろいろ新鮮で面白かった。
自分は、このブログの内容も絡めた「肉食減量主義の普及」をマイプロジェクトとして書いた。けっこう会心の出来だと思ったのだが、「すでに世間で言われていることで、もっと工夫がいる」といった辛口コメントがついて、得点としても合格ラインの70点に満たない61点。これはちょっとへこんだが、自分も人のレポートにやや辛口なコメントをしてしまったので、これは他の人もだいたい、こんな気持ちを味わっていると推測する。
結果はともかく、こうやって客観的に自分のプロジェクトを評価してもらう機会ってなかなかないから、これもまた、有意義な経験をさせてもらったと思う。
この授業に関しては「修了証」の発行などはなく、全授業後のミニクイズの得点と最後のレポートの平均点が合格ラインの70%を超えていることを自分で確認した時点で修了。まあ、クイズは間違えても答え直しができるし、別に修了した事実が就活とかに影響するわけでもないので、この修了はあくまでも自分の気持ちの問題だ。
私の場合、主に通勤電車の中などで受講して、修了までにだいたい3週間くらいかかった。
YouTubeとの違いと、オンライン大学講座を受けるメリットとは
最後に、同じように動画でけっこう為になる情報があがっていたりするYouTubeとJMOOC、学習の方法としてどちらが優れているのか比較してみたい。
YouTubeも、たとえば元オリエンタルラジオの中田敦彦さんが書籍をするチャンネルとか、塾講師による数学の解説動画とか、本を読むよりも効率よくアタマに入ってくるようなコンテンツがあり、知識を得る方法としてはけっこう便利だと思う。
JMOOCがそれと違い、かつ優れているところを考えると、以下のような点が思い浮かんだ。
・「全何回」といったように、あるテーマについて順序立てて、継続して体系的に学べる
・他人が書いた本の解説ではなく、大学教授という専門家本人による解説
・エンタメ系のおススメ動画のレコメンドや、広告による中断などの邪魔が入らず集中できる
ちなみに、他に「俺はいま一流大学の授業を受けているんだ」と悦に入れるというメリットもあるかもしれないが、それは本質ではないだろう。
自分の場合、YouTubeはすぐに大好きな「ゲームプレイ実況」とかがリコメンドされてしまって結果的にそっちを見てしまったりするから、JMOOCの方が時間を無駄にしないで済んだかも。
一方、DIYや料理の技術など、座学よりも動画で実践して伝えたほうが伝わりやすい知識に関しては、YouTubeに一日の長があると感じる。
いずれにせよ、面白い人の講義はどのプラットフォームで見ても面白いし、その逆もまたしかりということで、YouTubeもJMOOCも、その時々で必要な知識を得るためにうまく使い分ける、といったところが落としどころだろう。
皆さんも生涯学習、学び直しのお供に、ぜひご活用ください。
【今回紹介したサービス】
JMOOC -無料で学べる日本最大のオンライン大学講座(MOOC)
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