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映画「香川1区」が使わなかった「共産党との距離感」フレーム

 

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公開後のトークショーに登場した大島新監督

「強者」に挑む「弱者」というわかりやすい構図

昨年(2021年)の衆院選を描いたドキュメンタリー映画「香川1区」を見てきた。面白かった。

 

“主役”にあたる小川淳也さんや、そのご両親、奥さん、娘さんらの人間性がみんな真っ直ぐなことが共感できたベースにあるものの、維新候補への出馬取りやめ要請騒動とか、何より、敵方である平井卓也さん陣営の方々の「オウンゴール」的行動(?)やらのハプニングもあって、最後まで見せ場満載だった。大島新監督、「ドキュメンタリーの神」がついてるなあ、と思った次第。

 

なんで、こんなに気持ちよく見られたのか。それを考えていて、気づいたことがある。この映画、共産党の「きょ」の字も出てこないのだ。

 

誤解しないでいただきたいが、私は別に共産党アンチではない、とここで断っておく。そういう意味ではない。

 

そのうえで考えると、この映画は「地元大メディアの御曹司」で、しかも「自民党」「大臣」「地元経済界・各種業界団体がこぞって支援」という強者の代表みたいな平井さんと、「庶民」「純粋」「お金に清廉」「市民が草の根で応援」な小川さんが対決するという、非常に分かりやすい構図となっている。

 

いわば、勧善懲悪、判官びいきこれ見りゃ、普通小川ファンになる。

 

といって、この構図自体に、ウソや誇張があるとも思えない。そういう意味でいうと、大島監督は本当に良い選挙区を素材に選んだな、と思う。

 

なぜ、普段見せられる「野党政治家像」と違って見えるのか

これを、ここ数年私たちが野党に関する情報に接するときに見させられ続けた構図と比べてみると、分かりやすく違う要素が共産党との距離感」フレームの有無だと思う。

 

立憲民主党は、共産党と組むのか、組まないのか。閣内協力か、閣外協力か。いや、閣外もダメだ。でも選挙で勝つには候補者調整は必要だ。なら共産が黙って降りてくれ。いや、それは失礼すぎる。でも妥協すると連合が黙ってない。そんな連合なんて切ってしまえ。いや、それじゃ共産に飲み込まれる‥などなど。報道などで頻繁に登場するこうした構図が、「共産党との距離感」フレームだ。

 

「組む」と「組まない」の間のわずかなスペースを、野党政治家たちは行ったり来たり、ちょこまかした立ち位置調整を何年も繰り返して、ギャラリーたちはSNSで互いの陣営に罵詈雑言を浴びせる‥。そんな、まことにストレスフルな光景をいつも見てきた。というか、メディアやSNSなどで切り取られるフレームが、いつも、この視点ばっかりだった。こんなん見せられては野党勝てないでしょう、と思う。

 

それに比べて、この映画の切り取った構図の心地良さは、別世界を見ているようだった。野党同士の内輪揉めなんか存在しない世界(維新とはあるけど)で、純粋な野党政治家が、利権にまみれた与党政治家に打ち勝つ。この見え方なら、野党が勝つこともあり得ると思う。

 

「香川1区」のような「構図」を他の地域でも見られれば……

実際、香川1区は早くから野党共闘が成功した稀有な選挙区の一つのようだ。ただ、下記のような「いつもの調子の」報道を見ると、フレームに当てはめようと思えば、いくらでも出来たことはわかる。

 

https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20211022-OYT1T50001/(読売オンライン・2021年10月22日)

 

大島監督はそんな「共産との距離感どうする」要素を、まったくカメラに映さなかった。というか、全体として政党視点の要素は極力なくして、小川さんや平井さん個人にスポットを当てている。意図してそうしたのか、無意識なそうなったのか、小川さんらのあり方自体がそうだったからなのかはともかく、だからこの映画は新鮮に見え、映画の中の小川さんに共感できるのではないか。

 

本当に誤解しないでいただきたいが、この映画のことを批判したくてこのように書いているわけではない。私が今回思ったのは、この映画のような「見え方」、この映画のような「構図づくり」を他の地域でも本当に出来たなら、野党にも勝ち目が出てくるのではないか、ということだ。

 

もちろん、それが出来ればとっくにやってるよ、と関係者の方々は思うだろが、それでも、何かしらのヒントがこの映画にはあったように思う。

 

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