実家で染みついた「ツギハギコンプレックス」を、靴下のダーニング修繕で克服した話
今週のお題「わたしの実家」
実家で子供の頃着せられたツギハギセーターのトラウマ
まだ実家で暮らしていた子どもの頃、超がつくくらい倹約家だった母親は、私に大きなツギの当たったセーターを着せた。肘とか脇の部分だったと思うけど、けっこう目立つ縫い跡で、豪快にパッチを当てている感じだったと記憶している。
小学校のクラスメイトでそんなボロい服を着ている子は一人もいなかったから、当時の自分は随分みじめな思いをした記憶がある。ツギハギは自分にとって自分の家の貧しさの象徴であり、一種のトラウマだった。それ以来、「ツギハギはみっともない」という強固な刷り込みがあった。
先日、41歳にして、そんなトラウマとサヨナラすることが出来た。きっかけは、靴下に空いた穴だ。
裁縫未経験男でも簡単にできた「ダーニング」
私はこれまで、靴下に穴が空いたら、その時点で捨ててしまっていた。
でも、よく穴が開くつま先や足の裏以外の部分の布地は、だいたい無傷だ。つまり、自力で穴を塞ぐことさえ出来れば、靴下はもっと長持ちする。
最近エコと節約にはまっている私はそう思い立って、針と糸を使って穴を塞ぐ「ダーニング」にチャレンジしてみた。男だって、靴下のつくろいぐらいできるようになった方がいいだろう。
やり方は、YouTubeを「ダーニング」で検索し、初心者向けにレクチャーしてくれている動画を参考にした。
用意するのは、刺繍糸と刺繍針。刺繍糸はかなり太かったので、6本の糸で出来ていたものをほどいて、半分の3本にして使った。
作業は割と簡単で、まず、靴下を円筒状の物体にかぶせて作業をしやすくする(写真は水筒を使用)。ふさぎたい穴の上を縦方向に一定間隔で縫って「ハゲたおっさんのバーコード頭」みたいな状態にした後、今度はそれと垂直に交わるように、横方向に縫っていく。
この時、横糸をさきほどの縦糸(バーコード)に互い違いに潜らせていくことで、糸部分が簡易的な織物みたいな状態になり、穴が塞がる、というわけだ。
裁縫なんか普段しない話題でも、つまずくこともなく、ものの5分くらいでつま先の一つの穴がふさがった。こんなに簡単とは‥‥もっと早く、この技能を習得しておけば良かった。
ついで、足の裏に空いた穴も同じ容量でふさいで、次の靴下も‥というわけで、あっという間に2足分の靴下を修繕することが出来た。刺繍糸もカラフルで、むしろ、直す前よりワンポイントが効いて良い感じにすら見えてくる。
損得だけじゃない、自力でものを直すこと自体の喜び
靴下くらい安いんだから、新しいのを買いなさいよ、というのが普通の価値観かもしれない。でも、自力で直せた時の喜びって、ちょっと金銭だけでは説明できないものがある。ユニクロで買った安物の靴下に、急に自分の所有物としての愛着が湧いてくるというか。
もちろん、服を修繕できればお金の節約にもなるし、地球環境にもいい。でも、こういうDIY作業って、損得抜きに行為それ自体に喜びが伴う感じがする。
実家時代以来、貧乏コンプレックスの象徴として嫌悪していたツギの当たった服も、今なら堂々と人前で着られる気がする。時代が変わったのかもしれないし、かつての学校のような同調圧力地獄のような場所にいないからかもしれない。何より、自分自身の価値観も変わった。そのことを今、心からうれしく思う。
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