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『シン・ニホン』実現のため、政治家は「神学論争」やってる場合じゃない!

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今さら過ぎるが、何かと話題になっていた本『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(著・安宅和人、NewsPicksパブリッシング)を読んだ。2020年2月刊行なのでもう2年近くも前の本だが、日本の改革がスローモーなので色褪せてはいない。良いんだか悪いんだか。


本の前半、世界と比べての日本人の生産性の低さや、世界的企業のランキング、大学の論文数のランキングなどがここ20年ほどで急下降していることなどは、多くの本で頻繁に指摘されていることとほぼ同じだ。


この本の独創性というか、安宅さんのことをすごいと思ったのは、この状況を嘆くだけでなく「それだけ伸び代がある」と形容して、具体的解決策を提示していることだ。


すなわち、人口の高齢化によりいまや国家予算のかなりの部分を占めるようになってしまった社会保障費のうち3%を若者の教育に回すこと。


ただ若者にカネをばら撒くだけではなく、日本が圧倒的に立ち遅れてしまったAIやコンピュータサイエンスの分野を担える人材を、一気に育成する。さらに、欧米を見習って大学の基金にお金を積み立てて運用することで、長期的にも安定的な財源を確保するという。これには納得させられた。


ひるがえって今の政治を見ると、「子ども手当て」的な感じで若者世代にお金を分配する政策は各党掲げていて、それはまあいいのだが、教育の中身を根本的に変えることについてはあまり触れられていない。今の仕組みのままお金だけ投じても、AI時代への立ち遅れは解決しないのではないか。特に、18歳以下の「こども」ばかりでなく大学などの高等教育の改革にももう少し目線を向けなければいけないと思う。


この本が言うように、教育予算はただのばら撒きではなく投資でもあるという視点で考えれば、教育の中身を改革したうえでもっと大胆にお金を投じることで、将来的な国民へのリターンは計り知れないものになるはずだ。


一方で、最近、私が読んで深く納得きた斎藤幸平さん、内田樹さんらの本では、政治や教育などの分野がすべて資本主義や株式会社の論理で動くようになることに警鐘を鳴らしていた。


シン・ニホンの視点は、まさに「株式会社日本」の利益最大化のための教育であり、その点は資本主義の枠内での語りという限界はあると思う。


でも、少なくとも現状は資本主義社会の中で日本は食い扶持を探す必要があるのだろうし、AIなどのテクノロジーは、利益の極大化以外の社会変革にも有益だろう。


とりあえず、安宅さんの主張する方向での改革は、今の日本に必要だと思う。そうした改革はそれはそれで実行しつつ、資本主義の行き過ぎを是正する取り組みも両立させる必要があると感じる。


そう考えると、政治には喫緊の課題がたくさんある。なのに、国会議員らが設定する次のテーマは憲法改正で、それにあと4〜5年、あるいはもう10年、喧々諤々の議論やら駆け引きやらで政治的エネルギーを費やすことになるとしたら‥。


憲法改正の是非自体はこの際置いておくが、そんな観念論、神学論争をしているうちに日本は全員、「おまんまの食い上げ」になるのではないか。政治家も国民も、そもそも何を、次に政治的エネルギーを費やすテーマに設定すべきなのかを考えてほしいと思った。